ツバメの子育て

 ツバメの子育てもそろそろ終盤に、忙しく飛び回るツバメの姿も街中から

見られなくなるのも、もうすぐです。

 

 おひさま教室のトップページのイラストはツバメの雛たち。

双子の離乳食を始めたころは、食いしん坊の子ども達の口が次々に開いて、

まるでツバメの雛たちを見ているようでした。それから食欲旺盛な子どもたち

のため日々の食事と、お弁当作りが巣立つ日まで続いたわけすが、エサを

運ぶ親鳥の姿に励まされ、いつも背中を押されてきた気がします。

 

と言うわけで今回はツバメの子育ての紹介を・・・。

 

*ツバメとは(日本野鳥の会HPより)

夏鳥として主に九州以北に飛来し(北海道では少数)、建造物に泥を材料にした

おわん型の巣をつくります。雄の尾は雌より細長く見え、チュピッなどと鳴き、

さえずりはチュチュビチュチュビジクジクビーと最後が濁ります。飛んでいる虫を

飛びながらとり、水も飛びながら飲みます。
•燕尾。上面が一様に黒い。
•全長:17cm 翼開長:32cm

 

*ツバメの一年 | NHK for School
 春。気温が上がり温かくなるとツバメは日本にやってきます。そして家の

のき先などに巣(す)を作り、たまごを産みます。それからおよそ2週間で

ひながかえります。親はこの時期、ひなのえさとなる虫を探して川原を飛び回り、

つかまえた虫をせっせとひなに運びます。

夏、ひなは大きく成長し、いよいよ一人で巣から飛び立ちます。

秋。一人前になった若鳥が、親鳥といっしょに、えさを求めて飛び、秋の終わり、

気温が低くなるとともに、日本からいなくなります。

冬。ツバメは、日本からおよそ5000kmもはなれたあたたかい南の国にいます。

春、日本があたたかくなるころにはまたもどってきて、子育てを始めます。

 

*ツバメは減少している(日本野鳥の会HPより)

 春になると、南の国から渡ってくるツバメ。しかし近年、ツバメは減少

しているといわれています。ツバメは古くから里山の自然の中で生きてきた

「人と自然との共存」を象徴する野鳥です。
ツバメが姿を消すとき、私たちにとっても大切な風景が消えていくことになります。

 

*ツバメ減少の原因

 ツバメが減少している背景は以下の要因が考えられ、いずれも私たち人間の生活と

深いかかわりがあることがわかります。

①里山の自然や農耕地の減少

 身近だった里山の自然が宅地化などで減り、農業の衰退により水田や耕作地が減少し、

ツバメのエサとなる虫が少なくなっていることが考えられます。エサの減少は、

子育ての成功率にも影響します。

②西洋風家屋の増加

 ツバメは民家の軒先などに巣を作りますが、最近の西洋風家屋では軒のないものや、

壁面が加工されて巣が作りにくいようです。巣を作る環境が減ってしまい、その結果、

繁殖が困難になりました。

放射性物質の影響

 昨年の原発事故による放射性物質がツバメに与える影響も心配されています。

チェルノブイリ原発事故ではツバメに部分白化や尾羽の突然変異が生じ、

汚染地域で雛の数が少ないことなどが報告されています。

 

 日本野鳥の会では、ツバメの情報を集め、ツバメをとりまく現況を明らかにする調査

が行われています。2012年に行った全国調査(一般調査:わたしの町のツバメ調査)

では、約4割の方がツバメ減少したと感じ、同時にカラスや人が巣を落としてしまう

例が多く報告されました。
 ツバメは人と自然の共存を考えるうえで重要な指標となる生き物です。ツバメが

減少している背景には、農業の衰退によりエサ場となる水田や耕作地の減少、

巣作りに適した日本家屋の減少などがあります。(他にも、シャッター商店街など、

今までツバメたちが巣を作っていた地域の過疎化が、人通りを少なくして、

人を盾に天敵から身を守ることができなくなったのも原因と言われています)

 

 日本においては、水稲栽培において穀物を食べず害虫を食べてくれる益鳥として

古くから大切にされ、ツバメを殺したり巣や雛に悪戯をする事を慣習的に禁じ、

農村部を中心に大切に扱われてきました。

 江戸時代にはツバメの糞は雑草の駆除に役立つと考えられ、ふんも大切にされました。

「人が住む環境に営巣する」という習性から、地方によっては、人の出入りの多い家、

商家の参考となり、商売繁盛の印ともなっていたのです。また、ツバメの巣のある家は

安全であるという言い伝えもあり、翌年ツバメが戻ってくるように、巣立っていった後

の巣を大切に残しておきました。

 時代が進むにつれ、ふんが不衛生、車庫や店内等に巣を作られ糞の物品への落下等

の問題、玄関の内部等に巣が出来て不在時の戸締りが困難になり不審人物の侵入を

許す可能性もあるなど、巣作りを妨害、出来てしまった巣を撤去するというケース

もふえてきています。

 なお、汚損防止が目的であってもツバメは野鳥なので、巣を撤去する際に卵や雛が

傷つくと鳥獣保護法に違反に問われるので、撤去をする場合は届け出が必要だそうです

Wikipedia 参照

 

 都会の中で見られる鳥の種類は、以外と多いものです。自然に触れる機会が少ない

私たちが身近にみることができる鳥たち。特に都会の鳥たちがどんなふうに生きて

いるかを知ることは私たち人間を知ることにもつながります。

 

 私はインドネシアのジャカルタに住んでいたことがありますが、日本から遠く離れた

慣れない異国の地でツバメに出会ったときは、懐かしい友に再会した気持ちになりました。

この目の前にいるツバメたちが海を越えて日本に旅立っていくのかと思うと、ツバメの姿

を探すのが日課となりました。ツバメが見られない時期、彼、彼女らは今、日本で子育て

をしているのかしらと思いをはせながら、季節感の薄い熱帯雨林の地で、ツバメは季節を

届けてくれました。。

 

 渡り鳥は渡る先の国の状況で数が減ってしまいます。自分の国だけではなく、

世界中の人々が安定し、平和の中で幸せにくらせないと、人は自分たちだけではなく

それ以外の多くの命にまで影響を与えてしまいます。

 小さな鳥が休む暇もなく子育てをする。それも遠い遠い国から命がけでわたってきて、

この日本を、しかも人の住むところを子育ての安住の地だと選んでやって来て・・・

もしツバメが巣作りできない街になった時、私たちは子育てをするために必要な、

目に見えない大切な環境を知らず知らず失ってしまっているのかもしれません。

 

ツバメが今日も空を飛んでいる

 

たったそれだけの幸せだからこそ、大切にしたいと思います。

 

 ツバメだけではなくスズメも数を減らしていると言われています。安全に巣作りできる

環境が減り、人間の出すごみによってカラスの数が増え、ツバメも雀もカラスに襲われる

被害にあっています。憎むべき 相手はカラスではありません。カラスもまた必死に知恵

を絞って人のそばで暮らす鳥です。人のそばで暮らす鳥たちがバランスよく生きられる環境

をどうしたら守っていけるのか、そのために私たちにもできることがあるのか、難しい

ことですが、まずは彼らがそばにいることに気付くことから考えていきたいと思います。

 

 リトミックを初めてずいぶん長くなりましたが、その間に子どもたちに伝えづらく

なっていくことが増えているのを感じています。歌を歌って聞かせていても、そこに

ある歌詞の世界そのものが、どんどん目の前から消えていく。

 文明が進めば進むほど、科学技術が発展して便利になればなるほど、人は自分の体

を通して経験し、学ぶチャンスを奪われていきます。バーチャルな世界でしか経験

できなることが増えてくるとしたら、それは子どもにとって大きなマイナスです。

 

子どもたちは体を通して経験することで 脳を成長させているからです。 

 

 生き物が身近にいる生活は、自分以外の命を感じるためにとても大切です。

まずはツバメの姿をさがして、おやこで空を見上げてみてくださいね。

え、こんな所にいたって、あまりにも近いところにいてびっくりするかも。。。

 

*ツバメ観察の注意点

①マナーを守りましょう。

 ツバメの巣は人家にありますから、お家の方の迷惑にならないようマナーは

守りましょう。勝手に敷地に立ち入たり、個人のプライバシー関わるような写真を

勝手に撮ったりしないように、気を付けましょう。

②カラスの目にご用心

 人が巣をのぞくことで、カラスがそこにツバメの雛や卵があることに気付くことが

あるそうです。遠くからそっと見守ってください。ツバメを観察してる人間を観察

している鳥がいるんですね。

③雛(ひな)に手を出さない

 巣から落ちたように見える雛に気付いても、手を出さないようにしましょ位。

そろそろ巣立の季節。近くに親鳥が必ずいるはずです。人が雛にかかわると、

親は雛に近づくことができず、人の手に触れると雛も弱ってしまいます。

そっとしておいてあげましょう。

 

 巣立った若鳥は、親鳥と共に川原に移動して、集団になって渡りの季節まで過ごします。

それまでに、エサのとり方を覚え、長い距離を渡るための飛行の技術も身に着けていきます。

 

 親と共に移動できるようになってからがひなが一人前になるための時間。

自分たちが生きている世界をどう生き抜いていくか、その術を身に着けることが

子どもの学びであることはどんな生き物にとっても同じです。

でも、ほかの動物に比べ、人の子は一人歩きができるようになってから大人になるまでの

時間がとても長いですね。社会が複雑になればなるほど、子どもが大人になる時間は

伸びると言われています。

 

子どもが自立するまでの時間が長くなると、親も親でいるべき時間も長くなります。

子育ての今は長い道のりの1日、今日も幼い命との時間が幸せでありますように。 

 

写真解説。

 1枚目の写真は、巣の中にいるツバメの子どもたち。2枚目の写真は…あれ?

ツバメの子にしては大きい!。 どうやら「かっこう」に托卵されたようです。

 たくらんとは、自分で子育てはせず、よその鳥の巣に卵を産みつけること。

雛は本来の主の卵より早くかえって、ほかの卵を全部巣から排除。かえった雛が

いても、かっこうの雛の方が体が大きいので、温めてくれている養い親のお尻を

どけてでも、巣から落とし、競争相手を排除します。あとは養い親が運んでくる

エサを食べて大きく育っていきます。ツバメの親は自分の子どもではない、よその子

をわが子と信じて一生懸命育てることとなります。

 それにしてもツバメの巣にも托卵が行われるとは、初めて知りました。 

 

 卵からかえったヒナは初めて見る存在を親だと認識します(刷り込み)。

親も自分の温めている卵の時から、ヒナの鳴き声を聞いていて、卵がかえった時に

見たヒナの鳴き声を聞くとわが子だと認識するそうです。わが子と認識してしまえば

身体の大きなヒナを必死に育ててしまう。人から見ると複雑ですが、子孫を残す

という観点から見ていくと、托卵もまた生き残る一つの手段、親子関係ってなんだろう

と考えるとき、ほかの生き物の親子関係や子育てを学ぶことも大切ですね。

 

 同種内での托卵も鳥の世界ではたくさんあるとか(よそのツバメがちゃっかり

卵を産み付けていくことがあるそうです)。托卵を巡る攻防も、自然界の環境が

変わることで、相手が変わってきているそうです。托卵についてはまた別の機会に。

 

 リトミックは音楽を学ぶ場ですが、その音楽の表現活動の中に様々な分野が

絡んでくると、リトミックの世界はもっともっと広がっていく、そんな可能性

を考えるとわくわくしてしまいます。

 

早川貴子